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ハングルは誰が作った?世宗大王が文字を生み出した本当の理由

筆者

韓国語を勉強するとき、最初に覚えるのが「ハングル」です。丸や線を組み合わせた独特の文字は、見た目にも印象的ですよね。実はハングルには、世界的にも珍しい特徴があります。それは、誰が、いつ、どのような目的で作ったのかが、歴史資料によってはっきり分かっていることです。

ハングルを生み出したのは、朝鮮王朝第4代国王の世宗大王(セジョンデワン/세종대왕)。しかし、彼が新しい文字を作った理由は、単に国独自の文字を持ちたかったからではありません。そこには、当時の人々が抱えていた切実な問題と、世宗大王の強い思いがありました。

ハングルを作ったのは世宗大王!

世宗大王は1397年に生まれ、1418年に朝鮮王朝の第4代国王に即位しました。学問や文化の発展に力を注いだ王として知られ、現在の韓国でも特に尊敬されている歴史上の人物です。

世宗大王が新しい文字体系を作ったのは1443年とされています。当初の名称は「訓民正音(フンミンジョンウム/훈민정음)」でした。これは「民を教える正しい音」といった意味を持つ名前です。

その後、1446年に訓民正音の原理や使い方を説明した書物が公布されました。この書物には、文字を作った目的や、子音・母音の仕組みなどが記されています。

つまり、ハングルは長い年月の中で自然発生的に形作られた文字ではなく、明確な目的を持って設計された文字だったのです。

なぜ新しい文字を作る必要があったのか?

世宗大王がハングルを作る以前、朝鮮では主に漢字が使われていました。しかし、ここに大きな問題がありました。

話し言葉である韓国語と、漢字を中心とした書き言葉が一致していなかったのです。

韓国語と中国語は異なる言語です。そのため、漢字だけで韓国語の発音や文法を正確に表現することは簡単ではありませんでした。漢字を使って韓国語を記録する方法も存在しましたが、習得には相応の知識が必要でした。

当時、漢字や儒学の古典を十分に学べるのは、主に教育を受ける機会に恵まれた人々でした。一般の民衆にとって、文字を読み書きできるようになることは決して容易ではなかったのです。

その結果、日常生活で困ったことがあっても、文字で自分の考えを伝えたり、文書を読んだりすることが難しい人が大勢いました。

世宗大王は、この状況を問題視しました。韓国語を話している人々が、自分たちの言葉を自由に書き表せない。そんな不便を解消するために、誰もが学びやすい文字を作ろうと考えたのです。

世宗大王が目指したのは「誰もが使える文字」

訓民正音の序文には、文字を作った理由が明確に記されています。

当時の韓国語は中国の言葉と異なり、漢字だけでは意思を十分に伝えられないため、文字を知らない民衆が自分の考えを表現できずにいる。そのことを世宗大王は問題として捉えていました。

そこで、新しい文字を作り、人々が自分の言葉を簡単に書き表せるようにしようとしたのです。

この考え方は、当時の社会を考えると非常に画期的でした。文字を読み書きする能力は、学問や政治、社会的な地位とも深く結びついていました。世宗大王は、文字を一部の知識人だけのものにせず、より多くの人々が使えるものにしようとしたのです。

もちろん、ハングルが誕生したからといって、すぐに社会全体の識字率が上がったわけではありません。新しい文字の普及には時間がかかり、漢字を重視する考え方も長く残りました。それでも、誰もが学びやすい文字を目指したという点に、ハングル誕生の大きな意義があります。

ハングルはどうして「科学的な文字」と呼ばれるの?

ハングルの魅力は、学びやすさだけではありません。文字の形にも、音声を分析して設計した工夫が見られます。

子音は発音するときの口の形などを参考にした

訓民正音の解説書によると、基本となる子音の文字は、発音に関わる器官の形を参考にして作られました。

例えば、ㄱは舌の根元が喉の奥に近づく様子、ㄴは舌先が上の歯茎付近に触れる様子を表したものと説明されています。そこに線を加えることで、関連する音を表す文字を作っていきました。

母音には天・地・人の考え方が反映された

母音の基本要素には、天を表す点、地を表す横線、人を表す縦線という伝統的な思想が取り入れられています。これらを組み合わせることで、さまざまな母音を表現できる仕組みになっています。

つまり、ハングルは単に形が簡単なだけではありません。発音の仕組みと、当時の思想的背景を組み合わせた体系的な文字なのです。

なお、現在使われているハングルは、子音と母音を組み合わせて音節単位のブロックを作るのが特徴です。例えば「한글(ハングル)」は、「ㅎ・ㅏ・ㄴ」と「ㄱ・ㅡ・ㄹ」という文字要素を組み合わせて表記します。

ハングルの誕生には反対意見もあった?

新しい文字を作るという世宗大王の試みは、当時の知識人全員に歓迎されたわけではありません。

漢字や儒学の伝統を重視する立場からは、新しい文字を広めることへの懸念や反対意見が出ました。既存の学問や文字文化を重んじる人々にとって、漢字とは異なる文字体系を導入することは、大きな変化だったからです。

ただし、反対の理由や当時の議論については、史料に基づいて慎重に理解する必要があります。後世の物語では劇的に描かれることもありますが、ドラマの演出と歴史的事実は分けて考えたいところです。

世宗大王は、新しい文字の仕組みを説明するために、集賢殿(チッピョンジョン/집현전)の学者たちと協力しました。1446年に公布された訓民正音解例本には、文字の原理や用法が体系的に説明されています。

この解説書は、ハングルがどのような意図で設計されたのかを知るうえで、非常に重要な歴史資料です。1997年にはユネスコ「世界の記憶」に登録されました。

ハングルが今も韓国人に愛される理由

ハングルは、現在では韓国語を表記するための文字として広く使われています。韓国では文字の創製と公布を記念する「ハングルの日」が10月9日に定められており、文字そのものが文化的な誇りの象徴となっています。

世宗大王が作ろうとしたのは、難しい知識を持つ人だけが使える文字ではなく、より多くの人が自分の言葉を表現するための文字でした。

韓国語を勉強していると、最初は見慣れないハングルに戸惑うこともあるかもしれません。しかし、その一つひとつの文字には、発音の仕組みを考え抜いた工夫と、民衆が読み書きできるようにという願いが込められています。

ハングルの歴史を知ると、韓国語の看板やメニュー、ドラマの字幕も少し違って見えてくるのではないでしょうか。

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植竹 智裕

元・世界新聞ライター。旅人(訪問国はアジアを中心に現在31カ国) 韓国歴は2005年の初海外旅行からスタートし、2012年には釜山からソウルまでママチャリで縦断。 オーストラリアでのワーキングホリデー中、田舎町で日本人ただひとり、韓国人に囲まれて生活したおかげあって2019年に韓国語能力検定5級取得。

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