韓国料理

韓国には「アンモニア臭の刺身」がある!? ホンオフェ(홍어회)を食べてみたい!

筆者

韓国には、初めて聞いたら「それ、本当に刺身なの?」と思ってしまうような食べ物があります。

その名もホンオフェ(홍어회)。

日本語では「ガンギエイの刺身」などと訳されますが、一般的な刺身を想像して食べると、その強烈な個性に驚くかもしれません。

なぜなら、この料理の最大の特徴は――鼻を突き抜けるようなアンモニア臭なのです。

韓国では特に全羅道地方の郷土料理として知られており、なかでも全羅南道の木浦(モッポ)や新安・黒山島(フクサンド)のホンオが有名です。韓国民族文化大百科事典でも、発酵させたホンオを細切りにして食べる「홍어회」が全羅道地方の郷土料理として紹介されています。

■そもそも「ホンオ」って何?

ホンオ(홍어)は、韓国語でエイの仲間を指す言葉です。

画像:Wikipediaより

普通の魚とは少し違い、サメやエイなどの軟骨魚類は、体内に尿素を多く含んでいます。

この性質が、ホンオ独特の食文化を生み出すポイント。

ホンオが死んだ後、体内の尿素が分解されることでアンモニアなどが生じ、強烈な香りと刺激が生まれます。韓国観光公社も、ホンオの熟成によってアンモニアやトリメチルアミンが生じ、独特の匂いや味につながると説明しています。

つまり、あの「ツーン!」とする香りは、単純に魚が腐っているから出ているわけではありません。

ホンオ独特の熟成によって生まれる香りなのです。

■なぜわざわざ発酵させるの?

現在の感覚からすると、「冷蔵庫に入れればいいのでは?」と思ってしまいます。

ところが、冷蔵技術がなかった時代にはそうはいきません。

有名な産地である黒山島から木浦や内陸部までホンオを運ぶには時間がかかりました。その輸送中に自然に熟成が進み、そこで生まれた独特の味が食文化として定着したという説が広く知られています。

実際、韓国の国土研究機関が2026年に紹介した記事でも、黒山島から木浦・羅州方面への輸送に数日を要したことと、冷蔵・冷凍技術がなかった時代の自然熟成との関係が説明されています。

つまり、

「保存していたら、ものすごい匂いになった。でも食べてみたら意外とうまい!」

というところから、現在のホンオ文化につながった可能性があるわけです。

ただし、いつ頃から「熟成したホンオ」を食べ始めたのかについては、歴史資料だけでは明確に特定できません。

■一体どんな味なの?

最大の特徴は、やはり香り。

口に入れる前からアンモニアのような刺激臭が鼻を刺激し、食べるとさらに鼻の奥をツンと突き抜けるような感覚があります。

筆者も10年以上前に高田馬場のにっこりマッコリで挑戦した事がありますがなかなか苦戦しました。

筆者

ところが、韓国でホンオを好む人たちにとっては、これこそが魅力。

身そのものには独特の歯ごたえがあり、熟成による刺激的な香りと合わせて楽しみます。

そのためホンオは、韓国人の間でもかなり好き嫌いが分かれる食べ物。

初めて食べる人にとってはかなり刺激的である一方、慣れてくるとさらに熟成の進んだものを好む人もいるとされています。

「臭いから嫌い」という人がいる一方で、

「この刺激がないとホンオじゃない!」

という熱烈なファンも存在するのです。

■最も有名な食べ方が「ホンオサムハプ」

そんなホンオを初めて食べるなら、ぜひ知っておきたいのがホンオサムハプ(홍어삼합)。

これは、

ホンオ+豚肉の茹で肉+熟成キムチ

という3種類を一緒に食べる料理です。

熟成ホンオのアルカリ性の刺激を、酸味のある熟成キムチが和らげ、そこに脂身とたんぱく質を含む豚肉を組み合わせることで、独特のバランスが生まれます。

食べ方はシンプル。

キムチの上にホンオと豚肉を乗せ、好みでニンニクなどを加えて、3つを一緒に口へ入れます。

ホンオだけで食べるよりも、豚肉のまろやかさとキムチの酸味が加わるため、刺激が少し和らぎます。

さらにマッコリを合わせると「ホンタクサムハプ(홍탁삼합)」。

韓国の食文化を象徴するような、かなり個性的な組み合わせです。

■「腐った魚」とは違う!

ホンオについて最も誤解されやすいのが、

「そんなに臭いなら腐っているのでは?」

ということ。

しかし、ホンオの特徴的な香りは、通常の腐敗臭とは異なり、軟骨魚類に含まれる尿素が分解されて生じるアンモニアなどによるものです。韓国観光公社も、これをホンオの熟成による特徴として説明しています。

もちろん、だからといって「どんな状態でも食べられる」という意味ではありません。

現代では専門店などで適切に処理・熟成されたものを食べるのが基本です。

■初心者なら「弱め」から挑戦!

「ちょっと食べてみたいけど、いきなり強烈なのは怖い……」

という人には、あまり熟成を進めていないホンオから試す方法もあります。

熟成ホンオが苦手なら生のホンオを試す方法もあります。生のホンオは熟成による強烈な香りがなく、歯ごたえのある食感を楽しめます。

逆に、ホンオ好きになると、

「もっと刺激が欲しい!」

と、より熟成したものを求めるようになることも。

同じ魚なのに、熟成度によって“難易度”が変わるというのも面白いところです。

■韓国旅行で「怖いもの見たさ」なら挑戦してみたい

韓国にはキムチやサムギョプサル、チキンなど、日本人にもおなじみの料理がたくさんあります。

その一方で、ホンオフェはかなりディープ。

見た目は普通の刺身なのに、口に入れた瞬間に鼻を突き抜ける強烈な刺激。

そして、その刺激を「最高!」と感じる人もいれば、「二度と食べたくない」と感じる人もいます。

まさに韓国の“珍味”を代表する存在です。

特に木浦はホンオ文化と深い関係があり、現在もホンオサムハプを提供する店が数多くあります。韓国観光公社も木浦をホンオの代表的な食文化の地域として紹介しています。

韓国旅行で普通のグルメにはもう飽きたという人なら、

「アンモニア臭のする刺身を食べてみる」

という、かなりインパクトのある体験をしてみるのも面白いかもしれません。

また、Amazonで冷凍のホンオフェも売っているのでご自宅で禁断の挑戦したい方はぜひ…!

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ただし、最初の一切れを口に入れる瞬間だけは、少し覚悟しておいたほうがよさそうです……。

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植竹 智裕

元・世界新聞ライター。旅人(訪問国はアジアを中心に現在31カ国) 韓国歴は2005年の初海外旅行からスタートし、2012年には釜山からソウルまでママチャリで縦断。 オーストラリアでのワーキングホリデー中、田舎町で日本人ただひとり、韓国人に囲まれて生活したおかげあって2019年に韓国語能力検定5級取得。

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