韓国の国旗を描けますか?
皆さん、韓国の国旗(太極旗)はきっとたくさん見る機会があるかと思いますが、描けと言われると意外と難しいものです。
いざ書けって言われると赤が上だったっけ、青が上だったっけ?
四隅の黒い線は全部一緒?
丸の大きさってどのくらい?
もちろん、絵に描く機会なんてそうそう無いですし、描けたからどうなるという事ではないですが、今回は国旗に込められた意味や、国旗にまつわるトリビアをいくつかご紹介します!
韓国の国旗(太極旗)
韓国の国旗は태극기(太極旗)と呼ばれています。1949年の国旗制作法、2007年の大韓民国国旗法で各要素の大きさや色、規格や掲げる日などが定められていますが、国旗を構成する要素自体は制定以来ずっと変わっていません。
●白地の意味
白地は純一で、混じりけがなく、潔白であることと平和を愛する民族精神を表しています。
●赤と青の対極の意味
赤は陽(天)、青は陰(地)を表し、光と影、男性と女声、新旧、善悪など儒教哲学で万物の根源である太極と同時に、国民を表しています。
●黒い線の意味
사괘(四卦)といい、中央に描かれた太極(国民)の発展する様相や、秩序の安定、政府を示しています。
乾 → 天道(道徳的義理)
坤 → 地道(厚徳と豊穣の共利)
坎 → 水性(知恵・活力)
離 → 火性(情熱・光明)
つまり、平和の中心に国民がいて、その周辺を取り巻く豊穣(経済的発展)や正義などの社会秩序と、知性や情熱などの人間性がバランスよく配置・調和されている事で、文化の創造と平和な社会への理想を表した国旗と言えるでしょう。
太極旗掲揚に関する法律
2007年に公布された大韓民国国旗法には以下のような規定があります。
掲げる日が決まっている(詳細▼)
掲げる日には以下の通り。
●1月1日 元旦
●3月1日 삼일절(三一節)
1919年3月1日の日本に対する三一独立運動を記念した祝日です。
●6月6日 현충일(顕忠日)
独立運動犠牲者や朝鮮戦争戦没者を追悼する祝祭日です。追悼の場合は太極旗をポールの真ん中程度の高さに掲げます(半旗)。
●7月17日 제헌절(制憲節)
1948年、大韓民国憲法が公布された祝日です。
●8月15日 광복절(光復節)
韓国(朝鮮半島)が日本統治から解放された事を祝う祝日です。
●10月1日 국군의 날(国軍の日)
朝鮮戦争中の1950年10月1日に、それまで押されていた韓国軍が38度線を越えて北進反撃した事を記念する祝日です。
●10月3日 개천절(開天節)
檀君神話に基づいて、檀君朝鮮が建国された日とされる祝日。
●10月9日 한글날(ハングルの日)
1446年のこの日にハングルの元になった訓民正音が公布された事を記念した祝日。
●国葬が行われている期間
●別途、政府が指定した日
●自治体ごとの祝祭日
掲げる場所が決まっている(詳細▼)
・国家・地方の政治施設・庁舎と公共団体の施設。
・学校や軍施設の掲揚台。
・空港やホテルなどの国際的な施設(可能な限り)。
・大型ビルや競技場、公園など(可能な限り)。
掲げる時間が決まっている(詳細▼)
・公共施設では年中掲揚する。
・その他施設でも24時間365日掲揚してよいが、日中のみの場合は7時から18時(3月〜10月)、7時から17時(11月〜2月)とされている。
その他(詳細▼)
・夜間に掲揚する場合は適度な照明が必要。
・雨・雪・風などで毀損の恐れがある場合は掲揚しない。
太極旗の歴史
●図案としての歴史(ざっくり)
中央に相対する陰陽を配置して、周囲に卦を配置する図案自体は1392年?以降の李氏朝鮮の時代から国王の象徴である御旗として存在していたと言われています。
現在の太極旗の元になったのが、1882年に考案、1883年に制定されたこちらの太極旗。太極のうねりが今よりも複雑でした。また、当初は卦の配置も文献によってまちまちだったほか、外交の場でしか使われなかったので、国民に浸透したのは日本の支配下にあった時代、三一運動をはじめとする独立運動で朝鮮半島の国権の象徴とされた頃と言われています。
そして1948年に大韓民国が主権国家として独立した後、1949年10月15日に国旗製作法を公布、2007年には大韓民国国旗法が公布されました。
●名称としての歴史(ざっくり)
1882年〜1883年の時点ではただ国旗と呼ばれ、太極旗と呼ばれていたという文献は残っていません。太極旗という呼び名が一般的になったのも日本支配下の時代で、三一運動の際に朝鮮国旗という名称を使うと、独立運動の計画が日本人に知られる可能性があった為、隠語として使っていた太極旗がそのまま国民に浸透したと言われています。こうして1948年の独立に際して、政府が「太極旗を正式な国旗とする」という事を宣言し、以降、正式名称となりました。
国章
国旗とは別に、国ごとの紋章として国章というものがあります。韓国の場合はこちらも赤と青の太極が描かれ、その周りを国花のムクゲ(民族生命の強靭性を表す)で囲ったものが使われています。
パスポートの表紙に描かれています。
余談ですが、日本は法律で定められた国章が存在しませんが、
1965年以降、パスポートには16弁表一重菊花の紋章が使われています。
太極旗にまつわるトリビア
「中国文化の影響」発言はタブー
韓国政府は公式に「太極旗は古代の宇宙観を表したものとして古代朝鮮の時代から広く使われてきた陰陽の概念を図案化したもの」としていて、中国の易学や太極図説(1070年)より前に刻まれた古代朝鮮式の太極文様を根拠に、中国文化との関連を否定しています。
真実は考案した人やその人の遺した文献じゃないと分からないけど、いずれにしてももはや太極旗を見て中国を連想する人は少ないはず。
立派な韓国の国旗でありシンボルです。
北朝鮮でも建国までは太極旗が使われていた
歴史背景を考えると何の不思議もないのですが、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)でも建国直前の1948年7月上旬までは朝鮮民族の主権の象徴として太極旗が使われていました。
1947年には、北朝鮮単独での独立を進めたいソ連に対して、中国哲学としての太極旗の意義(上記の韓国の主張とは相反しますが)を伝え、そのまま北朝鮮の国旗として支持する旨を伝えましたが、ソ連の反対を受け、現在の藍紅色旗を採用。
1ヶ月早く韓国側が太極旗を採用して独立していた事もあり、「非科学的で迷信がかっていて、不必要な難解さと、要素が多様過ぎる旗」として建国以来は一切使われなくなりました。
もし1947年の段階で北朝鮮が太極旗を国旗にする意向をソ連がOKしていたら今頃どうなっていたんでしょうね!?
よくみるとデザインが間違っている事件がいくつかあった
今回ご紹介したように、太極旗は国の法律で各要素の規格や色形が細かく決められていますが、いまだに中央の円が小さかったり、左右反対に描かれたりする事があり、国連で長い間、円が小さい太極旗が掲げられていたなんて事も。
以下のリンクではパッと見だと分かりづらいですが、サッカー五輪アジア予選で掲げられた太極旗の赤と青の膨らんでいる部分とすぼんでいる部分が左右逆になっています。
韓国の方だと一目見ただけで、「あ!逆だ!」とか「四卦の配置が違う!」ってすぐに気付くものなのか気になるところです。
すべての国旗には意味がある
一見シンプルに見える韓国の太極旗ですが、調べてみたら結構たくさんの意味や哲学が込められていました。
どの国の国旗も「ただ綺麗だったから三色並べただけ」「何となく星印入れてみた」ではなく、全てに意味があります。また国章(国の紋章)も国によって動物が描かれていたり、主産業が図案化されていたりとユニークで意味深いものばかり。
今回は、韓国オタク兼・旅人の筆者が愛用している本(偶然掃除してたら出て来た)をもとに韓国の国旗について調べてざっくりご紹介しました!
絵が多くてカラフルなので子供の学習にも◎、大人が読んでも勉強になるので何度も楽しめます。
筆者が持ってるのはだいぶ前に買った三訂版なので、Kindleで買っちゃおうかな。