日本では「犬顔」という言葉を聞くと、どちらかというと好意的なイメージを持つ人が多いのではないでしょうか。
たれ目で親しみやすい、かわいい、優しそう。
「犬系男子」「犬系女子」という言葉もあり、芸能人の顔立ちを「犬顔でかわいい」と表現することも珍しくありません。
ところが韓国語で「犬みたいな顔」という意味で、개같이 생겼다(ケガチ センギョッタ)と言ったら、話はまったく違ってきます。
場合によっては、かなり強烈な悪口になってしまうのです。

外国人に言われたらまだしも、韓国人同士でそんなこと言ったら即大喧嘩・髪の毛の掴み合いになりかねない最も危険なワードの一つです。
「犬顔」と「개같이 생겼다」は別物
まず注意したいのが、日本語の「犬顔」と韓国語の「개같이 생겼다」は、そのまま対応する表現ではないということです。
개(ケ)は「犬」、같이(カチ)は「~のように」、생겼다(センギョッタ)は「~のような見た目をしている」という意味です。
そのため、直訳すれば「犬みたいな見た目をしている」となります。
しかし、人間の外見について개같이 생겼다と言えば、普通は「犬のようでかわいい」という褒め言葉ではありません。むしろ「ひどい顔をしている」「見た目が最悪だ」といったニュアンスの、かなり失礼な表現として受け取られます。
なぜ韓国では「犬」が悪口になるの?
韓国語では、개(犬)が人に対する侮辱表現に使われることがあります。
代表的なのが、개새끼(ケセッキ)という言葉です。
개は「犬」、새끼は本来「動物の子・子ども」を意味しますが、人間に対して使うと強い侮辱になります。「犬の子」という文字通りの意味から、英語の「son of a bitch」などに近い非常に強い悪口として使われることがあります。
このため韓国語では、「犬」という言葉を人間に対して使うとき、日本語とは違ったネガティブなニュアンスが生まれる場合があります。
では、韓国では犬そのものが嫌われている?
もちろん、そんなことはありません。現在の韓国では犬を家族のように大切にする人も非常に多く、「반려견(伴侶犬)」という言葉も一般的です。また、かわいい犬を表すネットスラングとして、댕댕이(テンデンイ)という表現もあります。
これは犬や愛犬をかわいらしく呼ぶ言葉で、SNSなどでもよく使われています。つまり、犬そのものが悪いのではなく、人間を「犬のようだ」と表現するときに侮辱的な意味が生じるということです。
「犬みたいにかわいい」はどう言えばいい?
ここが日本人にとって特に注意したいところです。
日本語なら、「犬みたいでかわいい!」「犬顔でかわいい!」と言っても、普通は褒め言葉ですよね。
ところが韓国語で単純に「개같이 생겼어(犬みたいに見える)」と言ってしまうと、相手には「犬みたいなひどい顔」と受け取られる可能性があります。かわいい犬っぽさを表現したいなら、例えば、
강아지상이다(カンアジサンイダ)
という言い方があります。
강아지(カンアジ)は「子犬」という意味で、강아지상は「子犬系の顔」「子犬っぽい顔立ち」というニュアンスです。
日本語では子犬っぽいも犬顔も似たように褒め言葉ですが、韓国語では褒め言葉と侮辱の双極。天と地の差があります。

日本語の「犬顔」に近い褒め言葉として覚えておくと便利でしょう。
さらにややこしい「개」の使い方
韓国語の「개」には、もう一つ面白い使い方があります。
最近のカジュアルな韓国語では、개-を言葉の前につけて「めちゃくちゃ」「超~」という強調表現にすることがあります。
例えば、
개맛있어(ケマシッタ)
=めちゃくちゃおいしい
개웃겨(ケウッキョ)
=めちゃくちゃ面白い
개예뻐(ケイェッポ)
=めちゃくちゃかわいい
といった具合です。
つまり「개」は、「犬」という本来の意味だけではなく、「強烈に」「めちゃくちゃ」というスラング的な働きをすることもあります。

日本語でいう「くっそ⚪︎⚪︎」と同じで、この場合はポジティブな意味でもネガティブな意味でも使われます。
ただし、かなりカジュアルな表現なので、目上の人やフォーマルな場面では避けたほうが無難です。
「犬顔=最大の悪口」は本当?
では、韓国では「犬顔」が最大級の悪口なのでしょうか。これは少し違います。「犬顔」という概念そのものが韓国で最大級の悪口というわけではありません。
日本語の「犬顔」に近い「강아지상」は、むしろかわいらしい顔立ちを表すことがあります。
一方で、개같이 생겼다のように、人間の外見を「개(犬)」に直接結びつける表現は、侮辱的なニュアンスを持つことがあります。
つまり重要なのは、「犬顔」なのか、「犬みたいな顔」と悪口として言っているのかという違いです。
日本語では「犬=かわいい・親しみやすい」という連想から褒め言葉になりやすいのに対し、韓国語では人への侮辱表現として「개」が使われることがある。
この違いを知らないまま日本語感覚で韓国語を話すと、思わぬ誤解を招く可能性があります。
「犬」という一文字にも文化の違いが表れる
日本と韓国は近い国ですが、同じ動物を表す言葉でも、人に対して使ったときのイメージが異なることがあります。
「犬顔」という日本語をそのまま韓国語に置き換えてしまうと、思わぬ意味になってしまうのもその一例です。
韓国語で「かわいい犬系の顔」を表現したいなら、개같이 생겼다ではなく、강아지상。
この違いを覚えておけば、韓国ドラマで「개」が出てきたときにも、単純に「犬」という意味だけではないことが分かって、セリフのニュアンスがより理解しやすくなります。
同じ「犬」でも、言葉が変われば「かわいい」にも「強烈な悪口」にもなる。
韓国語の面白さがよく分かる表現の一つです。
