韓国の芸能人の名前を見ていると、韓国語でも日本語でも名字がイなのに、英語表記だけLeeになっていて不思議に思った方もいるのではないでしょうか?
Lee Hyori(イ・ヒョリ), Lee Min-ho(イ・ミンホ)など
今回はそんな韓国人の名字の不思議についてご紹介します。
原因は頭音法則
まず、韓国のイという名字は漢字で書くと李ですが、元々の漢字の読み方は리です。これが韓国語のルールでは이と表記・発音が変化します。
ちなみに韓国人ではありませんがブルース・リーも韓国では中国での芸名である李小龍を韓国語読みした이소룡と呼ばれています。
似たように実際の漢字の読み方とは異なる名字に林氏(림→임)、羅氏(라→나)や柳氏(류→유)、盧氏(로→노)、呂氏(려→여)があります。
このように漢字の読みがㄹやㄴから始まる単語の中には、文の一番頭にくると表記や発音がㅇやㄴに変わるものがあります。
남녀(男女)→ 여자(女子)
하락(下落)→ 낙하(落下)
도로(道路)→ 노면(路面)
비료(肥料)→ 요리(料理)
이론(理論)→ 논리(論理)
これは朝鮮半島で古くから使われている頭音法則というルールによるものですが、詳しい法則を説明し始めると長くなるのでまた別の機会に改めてご紹介できればと思います。
北朝鮮では問答無用でリ氏
愛の不時着に出てくる主人公リ・ジョンヒョク氏。
彼はなぜイ・ジョンヒョク氏ではないのでしょうか?これは北朝鮮が頭音法則を廃止した事に由来します。朝鮮半島で長いこと使われてきた頭音法則を廃止し、本来の漢字読みをそのまま使う事をルールとして定めました。
この為、李さんは리さん、盧さんは로さんになります。
名字だけではなく、上で挙げたような単語も漢字読みの通りに表記・発音するので、以下のようになります。
여자 → 녀자
낙하 → 락하
이론 → 리론
논리 → 론리
南北分断の象徴となっている臨津江も、韓国側では임진강、北朝鮮側では림진강と表記・発音が分かれています。
あえてㄹ始まりの表記を選ぶ人もいる
北朝鮮では否応無しに李さんは리さんになるとお話しましたが、それではリュ・シウォンは北朝鮮人なのでしょうか?
そんな事はありません。彼の出身はソウルです。彼の名字である柳氏は유氏と称する人もいますが、류氏を選択する人もいます。なぜなら頭音法則とは関係なく元々유と読む兪氏と区別する為に、古くから류氏を名乗ってきたからです。
同じく羅氏も女優さんの라미란(羅美蘭)のように라を使う場合と나を使う場合と分かれるようです。
また、脱北者が自らの姓を北朝鮮にいた時のままㄹから始まりラ行で発音して使う場合もあります。
海外に出てしまえばみんな「リーさん」
韓国の이さんはパスポートなどの英語表記にLeeを使う事がほとんどです(一部あえてYiなどを使う人もいますが)。
北朝鮮の리さんは通常英語だとLiと表記します。また、中国圏の李さんはRiと表記したりブルース・リーのようにLeeと表記する人もいたりとまちまちですが、英語圏に行った時は、どの場合も「ミスター・リー、ミス・リー、ミセス・リー」です。
まとめ
頭音法則が無いほうが日本での漢字の音読みに近いので、北朝鮮式に読んだほうが音が似ているというのも面白い話ですね。
英語でも日本語でもどこの国の言葉でもそうですが、ややこしい変則活用や例外なんて無いほうが語学学習者にとっては学びやすくてありがたいのですが、もしも仮に韓国が頭音法則を廃止してしまったら…
リ・ヒョリ
リ・ミンホ
リ・ビョンホン
リ・スンギ
リム・スジョン
ロ・ムヒョン(大統領)
リョ・ジング
なんだかしっくり来ませんね(笑)
また人の名前も単語も、頭音法則を無視して発音してしまうと、響きが北朝鮮っぽく聞こえてあまりいい印象は与えないかもしれません。やっぱりちょっとややこしいですが、韓国語は韓国のルールに則って覚えるようにしましょう…!