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今も残る韓国の伝統的なシャーマニズム『巫俗』について

韓国のドラマを観ていると、お母さんが子供の将来や結婚を占いに行くシーンが見受けられます。

生米を使った占いや、狂ったように踊って神様を憑依させてお告げをしたりと表現のしかたは様々ですが、共通して見受けられるのは以下の点。

・大体が女性
・カラフルな衣装
・鈴が付いた鳴り物など神具がある
・お米を使った占い
・何かが取り憑いたように話し始める

韓国では教育に儒教が浸透しているほか、仏教やキリスト教を信じている人が多いですが、実は朝鮮半島には昔から続く『巫俗ムソク』という土着の伝統信仰(シャーマニズム)があり、これを行う人の事を巫堂ムーダンと呼びます。

主に仏教の影響を受けながらも、独特な儀式やお祓いを行う点から日本の伝統信仰である『神道』や『イタコ』などと似たような位置づけにありますが、その内容は大きく異なります。

巫堂の概要

韓国では『巫堂ムーダン』『巫教ムーギョ』『ムー』などと呼ばれる土着の伝統信仰(シャーマニズム)で、굿クッと呼ばれる儀式を通して神霊と人間を結ぶ宗教として自然界の精霊や土着の神霊、祖先の霊などの力を借りて、病気を癒やしたり、厄祓いをしたり、予言をしたりします。

地域によっても儀式の方法やスタイルに差があり、江陵の단오굿タノグッや東海側の별신굿ピョルシングッ、珍島の씻김굿シッキムグッなど一部は国家無形文化財として登録されているほか、地域の祭事など比較的大きなイベントとして観光客でも目にする事ができます。

これを行う人を『巫堂ムーダン』と呼び、地域にもよりますが、現在ではそのほとんどは女性が担っています。僅かながら存在する男性の場合は박수パクスと呼ばれます。

巫堂の歴史(ざっくり)

巫堂の起源は古朝鮮時代(???〜紀元前108年)にまで遡ると考えられています。この時代は朝鮮の建国神話である檀君神話の時代で、白頭山など自然を神格化し信仰する土着の宗教が形成され、その宗教的指導者が政治の実権を握っていました。

その後、三国時代にも多くの風習が付け加えられ、高麗の時代には巫儀として宮中の儀式にも取り入れられていました。

しかし、李氏朝鮮時代になると、儒教が国の基盤となり、更に国民の支配力を独占したい王室によって弾圧されるようになり、一定の宮中儀礼や医療には関与していたものの扱いとしては賎民に落とされ政治的な影響力は失われました。

この間にも仏教の伝来やキリスト教の伝来により、これらの宗教を信仰する割合が増えましたが、日本の統治時代の間も巫俗は存続していました。しかし、南北への分断を経て、まずは北朝鮮側での宗教弾圧があり、更には韓国側でも巫俗を迷信だとする政府による迷信打破運動で弾圧が行われましたが、近年では民俗伝統の文化として注目され、現在でも数多くの巫堂がいると言われています。

世襲巫と降神巫

儀式を行う巫堂は世襲巫と降神巫に分けられます。

世襲巫

古くは漢江より南の地域や東海側に多く、特殊な能力を持った家柄の血筋として代々継承されてきましたが、李氏朝鮮時代から賎民として弾圧を受けてきた事から巫堂の家柄である事を隠すケースが多く、現在では東海地域や湖南地域でその伝統が維持され、上述の江陵の단오굿タノグッや東海側の별신굿ピョルシングッ、珍島の씻김굿シッキムグッなど国家無形文化財として登録されている儀式もこの世襲巫によるものです。

降神巫

古くは漢江より北の地域(現在の北朝鮮地域も含む)に多く、一般人として生を受けながらある日突然、原因不明の巫病を患い、巫俗を通じて神降ろしをする事で巫堂となった人の事を指します。降神巫が多かった北朝鮮地域では独立後に宗教弾圧を避けて多くの巫堂が韓国側に南下した事と、世襲巫が李氏朝鮮時代から弾圧を受けてきた為に身分を隠して生活していた事から、現在韓国の巫堂の多くはこの降神巫だと言われています。

基本的な굿の進行

詳細な儀式の様子は『굿』『신내림』などで検索するとYouTubeでも多くのドキュメンタリーやインタビューが出てきますが、今回はそのうちのひとつをご紹介します。

こちらの動画では굿を行っている様子がドキュメンタリーに納められていますが、祭壇の前で歌舞を行う集団や、よくない気を持つ人をたいまつで叩いて厄祓いをするなどの儀式が含まれています。

こちらは男性巫堂の박수が굿を行う様子を撮影したドキュメンタリーです。

上の動画同様に祭壇の前で歌舞を行い、その他にも刃物の上で踊るなどの儀式を行っています。

こちらは『쌀점』という占いをしている巫堂の映像です。この映像の場合、車を買い替えたいと願うPDに対して、チンという楽器の上に生米を並べて占いますが、途中で祖先の霊と会話し、このPDが祖先を大切にしていない事に怒り出し、PDが反省した途端に米がチンに張り付きました。これをPDが食べる事によって願い事が叶うという事のようです。

実は街中に結構ある

巫堂の家は実は結構街中の色々なところで見る事ができます。下の写真は筆者がソウル市内で撮った写真です。白い看板に赤の卍マークと『○○사というハングルが書かれています。このというのは『寺』の事なので、随分住宅っぽい仏教寺院だなと思っていたのですが、実は仏教寺院ではなくこれが巫堂の家を表しているようです。

気になる鑑定料は5万ウォン(約5,000円)前後からとの事ですが、お守りを勧められたり、家でお祓いをする必要があると言われて結局何十万円の儀式をする事になったりと思っていたよりも費用がかかる場合もあり、中には高額のお守りを売りつけるなど詐欺の容疑で検挙されたケースもあるようです。

弘大などに行けばもっと気軽に四柱や手相を見てくれる占い師さんも居るのであまり興味本位で行くべき場所ではなさそうですね…。

巫堂が出てくるドラマ・映画

愛の不時着

宗教が弾圧されている北朝鮮ですが、ダンの母親が娘の結婚や将来に関して巫堂に相談するシーンが出てきます。

ああ私の幽霊さま

非業の死を遂げて若い女性に憑依を続けていたスネを懲らしめ、時に助ける巫堂役を『パラサイト』に出演のイ・ジョンウンがコミカルに演じます。

哭声(コクソン)

呪いによって村で不可解な猟奇殺人が多発し、祈祷師が登場し、家で厄祓いをするシーンが出てきます。

このエリアのクレイジーX

団地の隣同士に住み、精神的な病を抱えたミンギョン(オ・ヨンソ)とフィオ(ジョンウ)が最悪の出会いからどんどん接近していくラブコメですが、双方のお母さんが子供の将来を案じて同じ巫堂を尋ねるシーンが出てきます。

オクニョ 運命の女

物語の途中で奴隷として海州に送られてしまい、夜伽をさせられそうになったオクニョが幼い頃に学んだ占いと予め得ていた個人情報を駆使して巫堂のふりをして難を逃れるシーンが出てきます。

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植竹 智裕

元・世界新聞ライター。旅人(訪問国はアジアを中心に現在31カ国) 韓国歴は2005年の初海外旅行からスタートし、2012年には釜山からソウルまでママチャリで縦断。 オーストラリアでのワーキングホリデー中、田舎町で日本人ただひとり、韓国人に囲まれて生活したおかげあって2019年に韓国語能力検定5級取得。

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